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数学のゆくえ


目の前の結果を大切にした上で、理想の教育を実現するのが散田教室の壮大な夢です。

今日も本の紹介です。

「誰が数学嫌いにしたのか:教育の再生を求めて」上野健爾


この本も素晴らしい本です。紹介したい内容が多いです。少しずつ紹介していきますね。

上野健爾さんは世界的な数学者です。数学者は私も含め、教育全般に理想がある人が多いです。(前回の新井紀子さんもです。また藤原正彦さん、小平邦彦さん、岡潔さん、みな教育に対する考えを文にされています。)

上野健爾さんは東京大学理学部数学科卒業、京都大学教授を経て法政大学教授。日本には世界的な数学者がたくさんいるのに、あまり知られていません。ハーヴァードの教授が上野健爾さんの東京大学修士論文を見て「ハーヴァードでの博士論文3本分ある!」と驚いたのは有名な話です。同じく世界的な数学者である柏原正樹さんの東京大学修士論文は英訳されて出版されています!
(ちなみに「さん」呼びするのは湯川秀樹あたりからの日本の数学・物理の伝統です。皆が対等に議論するからです。)

なぜ数学者には、数学だけでなく教育全体を考えている人が多いのでしょうか?
数学は英語ではmathematicsです。本来は古典ギリシア語で「学問全般」というような意味です。数学は万学の基礎だといえると思います。読み書きの基礎であり、古来他の学問に入るのは「数学で脳を鍛え終わった後」とされていたそうです。

藤原正彦さんは「1に国語、2に国語34がなくて5に算数」

新井紀子さんは、今の国語のカリキュラムがこれでよいのか疑問視した上で「1に読解2に読解、34は外遊びで5が算数」と書いています。

数学者がみな、教育においては算数より国語が大切だといっています。賛成です。

ここに英語なんて一言も出てこないところがミソです。
ちなみに、新井紀子さんも藤原正彦さんもアメリカ留学経験があります。藤原正彦さんは「語学の勉強に時間をかけないように」と明言しています。

世界的な数学者である小平邦彦先生(上野健爾の先生)はアメリカの超一流大学で教授を歴任されましたが、「英語が話せない」ことは 有名でした。英語が話せないので事務室にいっても突っ立っているだけ。でも立っていれば、一流の事務員は何の用事なのかわかり、問題なかったそうです。
また世界的な数学者である佐藤幹夫さんは、本当に英語が出来ません。しかし素晴らしい論文を日本語で書くので、アメリカ人が日本語を学んで翻訳しています。本当に「サトウの論文が読みたい‼」という一心で日本語を学んだ方がいたようです。私もリルケの詩を原文で読むためにドイツ語を学び、プルーストを原文で読むためにフランス語を学びました。このように(会話でなく)文化に直接触れる、というのが語学学習の醍醐味だと思います。アメリカのスーパーで店員をするためではないと思います。(日本滅亡後にはだいぶ現実的な気はしますが。)

特に日本人は、読み書きは得意なので、英語も発音や聞き取りは諦めて、読み書きだけできるようにしたらいいではないかという気がします。昔の第一外国語であった漢文がそうでした。エリートだけはきちんとした発音を学んだそうです。

長くなりましたのでまた書きます。結局本の紹介にはなっていません。今日も読んでくださりありがとうございます‼

散田教室代表 
河野真士かわのしんじ
07053703866