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「学力喪失」今井むつみ


品川の本屋で「学力崩壊」今井むつみ

という本を見つけました。最近こういう本ばかり目に入ってしまいます。そしてショッキングです。

「1/2+1/3に最も近い数を答えよ」
選択肢は0, 1, 2, 3, 4, 5

計算すらしなくてよい簡単な問題に思えます。知っておくことは、
「1/2は0と1のちょうど間だ」
「足すと増える」
「1/3は半分よりは小さい」
ということだけです。(わかりますか?答えは1です。)

ところが、半分程度の生徒は、できません!!

恐らく多くの子供が、正解は「5/6」と答えられると思います。
しかしそれが「何をしているのか」が分からない。

一番多い誤答は「5」だそうです。

「5」はおかしいですよね。しかし、我々数学者は、答より、理由を大切にします。もし次に書くように答えられたなら、5が正解です。

「僕はいつも分数を逆に書きたいと思っているのです。いけませんか?(数学者の答:別に良い。)
だから普通の書き方で
4/1=4
などと書くところを
1/4=4
と書きたいのです。
ということで
1/2+1/3=2+3=5
です!」

このような教育を受けてきて、このように教育をしているのが数学者です。
数学教育は、理学部数学科を卒業し、博士号を持つ「数学者」でないと教えることはできません。
(医学部医学科を出て医師免許を持っている人でないと診療行為ができないことと同じ。)

しかも、体は治るか治らないか、です。しかも体には自然治癒能力があります。
精神は一度悪い方向付けをされてしまうと、戻すのが難しいと思います。

安易に比較はできないうえで、私は教育は医療行為より大切な仕事だと考えています。

本当に教育をしているのは、教育業界広しといえども、わが散田教室だけだと自負しております。

「役に立つ」ことばかりを求める教育からは答えを即答する技術が発達するのでしょう。

最近大学生によく「9×6は何?」などと訊いています。
皆即答します。「54です。」これは実は私の欲しい答えではありません!!
だからもう一度同じ質問をします。「9×6は何?」多くの学生は私の欲する答えを言いますが、何も言えない学生にはさらに次のように言います。
「初めに習ったときどう習うかな?『54だよ!覚えて!』とは習わないはずだよ。」

「ああ!9が6個!!」

そうです、それでいいのです。それが意味が分かっているということです。
私の20年ほどの教育経験で、答えられなかった大学生が2人いました。

「54ですよ54。絶対あってます。」

私は、これではわかっていることになっていないと考えます。

ちなみにこの手の質問、中3レベルになると、割と答えられない学生が増えてきます。教科書に載っているのに!「√2ってなに?」

今日1限の出席者で答えられた人は0人でした!
(正解:自分とのかけ算をすると2になる数のうち、正の数。)

ちなみに私は掛け算は覚えていません。次のようにいちいち計算します。(一瞬ですが。)

9×6
=9×5+9×1
=90/2+9
=45+9
=54

ゆっくり考えること、すぐには役に立たないことにじっくり取り組むこと。
これからAI時代に大切なことを、一緒に学んでいきます。

河野真士かわのしんじ
07053703866